今年も10月の頭からノーベル賞の発表があります。昨年はノーベル医学生理学賞に京都大高等研究院特別教授の本庶佑氏(ほんじょたすく)(76)が選ばれました。
2014年の日本人のノーベル賞受賞は物理学賞の
- 赤崎勇さん
- 天野浩さん
- 中村修二さん
3人のトリプル受賞で
2015年は
- 医学・生理学賞に大村智・北里大特別栄誉教授
- 物理学賞に東京大宇宙線研究所の梶田隆章教授
2人が選ばれました。
2016年は
- 生理学・医学賞に東京工業大学の大隅良典栄誉教授
と、ここ5年間で7人も日本人のノーベル賞受賞者が続けて選ばれています。
今回は2019年の
- 日本人のノーベル賞候補者
- 部門ごとによる発表の日程
- ノーベル賞の賞金額
などを紹介します。
ノーベル賞クラスの賞「クラリベイト・アナリティクス引用栄賞」とは?
世界的な科学情報企業であるクラリベイ卜・アナリティクス は9月26日に2019年の「クラリベイト・アナリティクス引用栄賞」を発表しました。この賞は3年前まで「トムソン・ロイター引用栄誉賞(ノーベル賞予測)」として発表していたものです。
学術論文の引用データ分析から、ノーベル賞クラスと目される研究者を選出し、その卓越した研究業績をたたえる目的で発表されています。
これまで、50人の引用栄誉賞受賞者がノーベル賞を受賞していますが、そのうち半数以上が引用栄誉賞の受賞から2年以内にノーベル賞を受賞しています。このことから本賞の受賞者はノーベル賞の最有力候補と言われています。
今年で18回目となる本年は日本人受賞者はいませんでしたが、含む19名が受賞しました。
昨年の日本人のクラリベイト・アナリティクス引用栄賞受賞者
日本からは、昨年医学・生理学分野において京都大学化学研究所 特任教授 金久實氏が選ばれました。
金久實教授は「KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)の開発を含むバイオインフォマティクスへの貢献 」において今回の受賞となっています。
受賞コメント
『1990年代のヒトゲノムプロジェクト以降、生命科学の分野では急速な技術革新によりゲノムをはじめとした分子レベルの様々な大量データが蓄積されるようになりました。
KEGGはそこから生体システムの機能を解読し、医療や創薬につながる有用性を見いだすためのデータベース及びバイオインフォマティクス技術です。
バイオインフォマティクスは実験研究を支援するための分野と思われがちですが、データの中から経験則を見いだし、生命の原理を探求する学問としての側面があることにも注目していただけたらと思います。 』
クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞はノーベル賞のうち4賞
- 医学・生理学
- 物理学
- 化学
- 経済学
特に2011年ノーベル賞では、該当4分野の受賞者9名すべてが、過去「旧トムソン・ロイター引用栄誉賞」を受けています。
引用栄誉賞を受賞後2年以内にノーベル賞も受賞する確率が高いということで昨年受賞した金久實教授は今年こそ期待したいところです。
クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞過去の日本人受賞者
日本人では過去に26名の受賞者がいますが、そのうちノーベル賞を受賞したのは
- 山中伸弥氏が医学・生理学賞(2012年)
- 中村修二氏が物理学賞(2014年)
- 大隅良典氏が生理学・医学賞(2016年)
この3名です。
ちなみにこの賞はその年のノーベル賞受賞者を予測するものではなく、「近い将来ノーベル賞を受賞する可能性の高い研究者」を発表することを目的としています。
ということは昨年受賞した金久實教授だけでなく、ここ数年受賞した日本人もノーベル賞の可能性があります。
2017年の日本人受賞者は桐蔭横浜大学 医用工学部の宮坂カ 特任教授です。
宮坂氏は
「効率的なエネルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用」においての受賞となりました。
2016年は日本人が2人選ばれていて
- 京都大学の森和俊教授
森教授は細胞内に作られた異常なタンパク質がたまるのをふせぐ「小胞体ストレス応答」と呼ばれる仕組みを解明しています。タンパク質が異常に蓄積するとガンや糖尿病、パーキンソン病などと深い関係があると言われていて治療法開発への応用が進められています。
- 大阪大の坂口志文特別教授
坂口教授は免疫が自己を見分けられずに自分の体を攻撃するのを抑えるリンパ球の一種である「制御性T細胞」を発見しました。この細胞は自己免疫疾患やガンの治療に効果があることを示しました。
- 森教授は4年前にアメリカのラスカー賞
- 坂口教授は3年前にガードナー国際賞
を受賞しています。
両賞の受賞者は同時にノーベル賞も受賞していることが多いので、もしかすると今年こそは選ばれるかもしれません。
2015年は3名選ばれています。
化学分野において、
- 崇城大学DDS研究所特任教授・熊本大学名誉教授の前田浩氏
- 国立がん研究センター先端医療開発センター新薬開発分野分野長の松村保広氏
ともに「がん治療における高分子薬物の血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果の発見」において受賞となりました。
- 医学・生理学分野からは京都大学客員教授の本庶佑氏
「プログラム細胞死1 ( PD – 1 )およびその経路の解明により、がん免疫療法の発展に貢献」による受賞となり、そして昨年本庶佑氏がノーベル医学生理学賞を受賞しました。
このようにここ数年毎年のように日本人の引用栄誉賞の受賞者が出ているので、今年もその中からノーベル賞受賞者が出るかもしれません。
ノーベル文学賞は2018年、2019年の2年分を発表
2018年のノーベル文学賞をめぐっては、選考機関のスウェーデン・アカデミーで性犯罪スキャンダルなどが相次ぎ、発表は見送られることになりました。
このまま文学賞の発表は無いと思っていたのですが、突然「新ノーベル文学賞」の候補に村上春樹さんが最終の候補に上がりました。
新ノーベル賞候補者4人の中に村上春樹氏
新ノーベル文学賞はスウェーデンの選考委員や世界中の人々の投票によって最終的に4人に候補がしぼられました。
その4人は村上春樹さん以外に
- ベトナム生まれのカナダ人作家キム・チュイ氏
- フランス海外県グアドループ出身のマリーズ・コンデ氏
- 英作家ニール・ゲイマン氏
この3人が候補となりました。
ですが新ノーベル賞を発表まで、あと3週間という時に、村上さんは最終選考のノミネートを辞退しました。
賞の選考組織「ニュー・アカデミー」のウェブサイトでは、
村上さんは、最終候補に選ばれたことに感謝の思いを示しながらも、執筆活動に専念したいとして辞退する意向を伝えてきた
と発表しました。
結局マリーズ・コンデさんが受賞し、その後の受賞式は本家のノーベル賞と同じ12月9日に開催されました。
この翌日にこのニューアカデミーは解散となり、2019年に本家のスウェーデンノーベル文学賞にて2年分の受賞者が発表されることになっています。
ですが本当のところはどうなのでしょうか?
詳しくは村上春樹はノーベル文学賞を受賞なるか?毎年候補に挙がるのに落選し続ける理由をご覧ください。
ノーベル賞2019の発表日の日程と発表される日本時間
2019年の10月に発表されるノーベル賞の日程は
- 医学生理学賞は10月7日(月)
- 物理学賞は10月8日(火)
- 化学賞は10月9日(水)
- 文学賞は10月10日(木)
- 平和賞は10月11日(金)
- 経済学賞は10月14日(月)
となっています。時間は例年18時から18時45分の間に発表予定となっています(日本時間)
各賞の授賞式は創設者アルフレッド・ノーベルの命日に当たる12月9日に行われます。
ノーベル賞の賞金額!税金はかかる?
ノーベル賞が創設されたのは1901年ですが、その当時は
- 医学生理学
- 物理学
- 化学
- 文学
- 平和賞
この5種類でした。
そして1968年にスウェーデン銀行が設立300周年を記念して作られた賞が経済学賞です。ノーベル経済学賞の正式名称は「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞」といいいます。
6賞あるノーベル賞のうち、経済学賞を除く5賞はノーベル財団が運営する基金から賞金が支払われます。そして経済学賞だけはスウェーデンの中央銀行が運営する基金から支払われます。
ノーベル賞の賞金は以前1000万クローナ(約1億2千万円)でしたが、2012年からは800万クローナに減額されています。
「毎年賞金を渡していると財源が無くならないのか?」という疑問が出てきますが株などで運営しているため、リーマンショックなどで基金が減ってしまうと賞金も減額されます。
ですが近年は基金が安定して一昨年からは100万スウェーデンクローナ(約1400万円)多い900万クローナ(約1億2500万円)に引き上げられました。
同じ賞を複数で受賞した場合の賞金は?
ノーベル賞の受賞者は1部門で最大3人までと決まっています。2014年の物理学賞のように3人が受賞した場合は3等分するか、最も貢献した人に半分、残りの2人に4分の1ずつ贈られるのが一般的です。
「ノーベル賞の賞金に税金がかかるの?」と思う方もいるかもしれません。ですが日本の場合所得税法では「ノーベル基金からの賞金は非課税」と明記されているので税金はかかりません。
ただし経済学賞だけは他の賞とは別で、スウェーデンの中央銀行の基金から賞金が出るのですが、これについてはついては記載がありません。経済学賞に限っては今のところ賞金は課税対象となってしまうようです。
とはいえ今まで日本人で経済学賞を受賞した人が一人もいないので受賞者が初めて出た場合に議論になりそうです。
実は日本人初のノーベル賞受賞者である湯川秀樹さんがノーベル物理学賞を受賞した際に、日本で「ノーベル賞に課税するの?」と話題となって法律を改正されたという経緯があります。
経済学賞を日本人が授賞すると同じように改正されるのではないでしょうか。
まとめ
ここ数年日本人のノーベル賞受賞者がたくさん出ているので今年も本当に楽しみですね。村上春樹さんは候補と言われてから今年で14年目で、昨年は新ノーベル文学賞の最終選考に残りましたが辞退しました。
やはり本物が良いと思ったのでしょうか?今年は2年分の発表があるので、そのどちらかに村上さんが入っている可能性があります。
昨年のノーベル賞受賞者の本庶佑氏は過去に「クラリベイト・アナリティクス引用栄賞」を受賞しており、今年の過去の引用栄賞受賞者から選ばれる可能性があります。
- 京都大学化学研究所 の金久實 特任教授
- 桐蔭横浜大学 医用工学部の宮坂カ 特任教授
- 京都大学の森和俊教授
- 大阪大の坂口志文特別教授
- 崇城大学DDS研究所特任教授・熊本大学名誉教授の前田浩氏
- 国立がん研究センター先端医療開発センター新薬開発分野分野長の松村保広氏
この中から名前が呼ばれるでしょうか?今年も日本人のノーベル賞受賞者の発表が楽しみです。